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賤ヶ岳


月刊誌だけでも4本の連載をかかえていると、これがけっこう忙しい。
甲府盆地、駿東、関東…と旅をしていたが、帰宅して一夜たったらもう北陸である。

伊那谷→岐阜→敦賀→小浜→舞鶴→京都→奈良→月ヶ瀬→上野→桑名→豊田→矢作→恵那→伊那谷。
こんなルートを再び4日間で走り抜けてきた。
ボクは連載や出版に関しては、自分自身で見聞したことしか表現しないので、こうして定期的にアンテナを磨いているからである。
今回の旅のテーマは、小浜から京都へぬける「サバ街道」がおもな目的だった。

伊那谷を出てすぐに中央アルプス南部の恵那山周辺には高速道路脇にたくさんのクマ棚を目撃できたから、岐阜県側にも相当数のツキノワグマの出没があったことを物語っていた。
さらには、北陸道の木之本インターから先の「賤ヶ岳SA」からは見事なクマ棚がみられた。そして、賤ヶ岳SAをほんの少し北陸よりに走ると低い目線にもかなり派手にクマ棚が飛び込んできた。
こうしてみると、それこそ全国まんべんなくツキノワグマの出現があると思っていいと感じた。
だから、あとはそれぞれの地域で、それぞれの技術を駆使してツキノワグマを調べてもらえばそれでいいのではないか、とも思った。
ツキノワグマは決して少ない動物ではないので、クマ棚以外にも痕跡を残さずに山野を潜伏して行動しているのだから、それらの行動把握に努めていけばいいのである。
現時点では決して希少種ではないので、各地で余裕をもって観察すればいいではないか。

とはいっても、研究者や専門家より農民や狩猟者のほうがはるかにツキノワグマの増加に気づいているので、これからは各地でツキノワグマ捕獲に本腰をいれてくることが予測される。
このため、関係者も調査をするには高度な技術を駆使しながらスピードをもって行わないと本当のデータがとりにくくなるだろう。
イノシシ檻


サバ街道を走って「朽木」へ出たところで、イノシシ肉直売の看板にであった。
こういうところで情報収集をすることも大切なので、立ち寄ってみた。
あいにく捕獲をしているお父さんは留守だったが、お母さんが対応してくれた。

gaku   『イノシシ肉はありますか?』
お母さん 『もう売り切れでっせ、冷凍もんもない』
gaku   『檻があるけれど、あれで捕まえるんですか?』
お母さん 『うん、お父さんがね』
gaku   『ボクは信州だけど、こちらの檻は大きいですねぇー』
お母さん 『だっけど、そない捕れませんねん』
gaku   『この檻にクマは入らないですか?』
お母さん 『はいらへん、クマなんていないもの…』

ボクにとって、会話はこのくらいで充分だった。
檻をみてもいまのところツキノワグマの混獲はなさそうだったからだ。
檻の鉄筋が7mmほどと細かったし、メッシュの大きさもツキノワグマのことを想定して製作していなかった。
なので、こちらの猟師はクマがまちがって檻に入ったときにどのような行動をとるのか、まだ知らないでいるからだ。
しかし、周囲の環境を見るかぎり、ボクにはそのうちにツキノワグマがこれらのイノシシ檻にも入るであろうことは予想できた。
そのときには、クマの対応に慣れていないからこの地域の人たちにも怪我人がでるにちがいない。
短時間の旅だったが、こうしたちょっとしたサインを読みぬくのも、それぞれの地域の人の意識を探ることができるから楽しい。

写真上:賤ヶ岳SAから見た山だが枠で囲んだところに7つばかりのクマ棚が目撃できた。
写真下:サイズはビッグだが、鉄筋が細くメッシュも大きなイノシシ檻。
03/30|ツキノワグマの調査コメント(1)トラックバック(0)TOP↑
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宮崎学プロフィル

宮崎 学

Author:宮崎 学
1949年、長野県生まれ。自然と人間をテーマに、社会的視点にたった「自然界の報道写真家」として活動中。
978年「ふくろう」で第1回絵本にっぽん大賞、1982年「鷲と鷹」で日本写真協会新人賞、1990年「フクロウ」で第9回土門拳賞、1995年「死」で日本写真協会年度賞、「アニマル黙示録」で講談社出版文化賞受賞。他写真集・著書多数。
最新刊「かわりゆく環境・日本生き物レポート」や「ツキノワグマ」「森の写真動物記」のシリーズが発刊中。

ホームページでは、中央アルプス山麓の仕事場をライブカメラにて24時間中継し、「家に居ながらにして自然が感じられる」と好評。

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