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fujigawa


かれこれ10年になるだろうか、ボクはカラスを追って全国を旅している。
北海道から九州まで、もう何百本もの木によじのぼり、カラスの巣と卵を調査している。
こんなマニアックな楽しみが写真集になりそうになってきたので、またにわかに忙しくなってきた。

今回は「塩の道」をテーマに山梨県の甲府市から富士川をくだって静岡県にある太平洋側の河口部まで旅をしてみた。
目的はカラスなのに、ツキノワグマのことも脳裏にあるから山並みを必然的に見つめてしまうことにもなる。
3日間の旅だったが2日間は天候も悪く、雨模様。

しかし、富士川を身延山まで下る周辺は、見事なまでものクヌギを中心とした雑木林が展開されていた。
この状況は、西日本で目撃した光景と山並みは違っていても内容は同じである。
静岡県の静岡市、富士市、御殿場市周辺には異様なまでものスギとヒノキの人工林がみられるが、これとて今日の日本全体の自然界からみれば微々たるものだ。
このような人工林も、内部での野生動物たちの活動を伝えてくれるようなビジュアルな仕事をしている人は日本にいないので、誰かがやってみると面白いだろうなぁと思いながら、東名自動車道を走って東京まで抜けてみた。

このあと、東京から中央高速道を走って再び甲府市まで向かった。
そこで驚いたのが、中央道談合坂SS付近から大月に至るまでに、クマ棚が遠望できるからだ。
「大田トンネル」の入り口斜面には見事なクマ棚が点在していたのには驚いた。
また、大田トンネルを通過して周辺の人家の庭先にまで、クマ棚がみられた。
高速道路を運転しての目撃なので停車するわけにもいかず、一瞬の通過でこれほどボクの目にクマ棚が飛び込んでくるのだから、詳しく調査をすればかなりみつかることであろう。

ここで感じたことは、今日ではツキノワグマの行動は全国一緒であり、車も人も恐れていないということである。
そして、山並みの「ドングリ林」の規模から推定して、ここ10年ほどさかのぼって考慮してもツキノワグマが減少しているという根拠はひとつもみられないということだ。
何回もいうが、減少ではなくてツキノワグマは「増加」しているとボクはハッキリいいたい。

このような自然界からのサインがちゃんと送られてきているのに、私たち現代人はそれを見落としているにすぎない。
そういうボクも、今回の中央道は東京まで何回も往復しているのに、これまでクマ棚を見ることがなかった。それは、夜間に走ったり、高速バスに乗っていたりしているから、こうしたサインを目撃していなかったのである。
fujigawa zouki


ここで大切なことは、ツキノワグマがいないのではなくて「いる」のだという視点で、ちゃんと意識しながら自然界全体を見つめなおしてみることである。
そうすれば、必ず彼らからのサインがみつかり、それをどう自分の技術で考察していくかであろう。
だから、これまでツキノワグマは「餌不足」で里へ降りてきたというワンパターンな発想でしか自然界全体を語れないような人は、技術不足で自然を語る資格がないのではないかとボクは思う。
ツキノワグマが実際には増えているのに、「減っている」といい続けることは社会にも混乱をまねくからだ。
これは、ツキノワグマのためにもよくないことだからである。

写真上:富士山の西側から南アルプスまで、とにかく広大な雑木林が目撃できる。
写真下:富士川のほとりの人家裏山にも見事な雑木林。
03/26|ツキノワグマ日記コメント(4)トラックバック(0)TOP↑
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宮崎学プロフィル

宮崎 学

Author:宮崎 学
1949年、長野県生まれ。自然と人間をテーマに、社会的視点にたった「自然界の報道写真家」として活動中。
978年「ふくろう」で第1回絵本にっぽん大賞、1982年「鷲と鷹」で日本写真協会新人賞、1990年「フクロウ」で第9回土門拳賞、1995年「死」で日本写真協会年度賞、「アニマル黙示録」で講談社出版文化賞受賞。他写真集・著書多数。
最新刊「かわりゆく環境・日本生き物レポート」や「ツキノワグマ」「森の写真動物記」のシリーズが発刊中。

ホームページでは、中央アルプス山麓の仕事場をライブカメラにて24時間中継し、「家に居ながらにして自然が感じられる」と好評。

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